話題になっているこちらのツイートについて。
— とくダネ!スタッフ (@tokudane_info) 2017年8月7日
「返事ないなら勝手に使うよ」ってそりゃあ炎上するよなあという感じですが、態度以前に「人の動画を勝手に利用するのは著作権的にNGだろう」というのが問題視されています。
それに関して、弁護士ドットコムがこんな記事を掲載。
要約すると、ツイートに添付されている動画を著作権者の許諾なく使用しても
テレビ局が時事の事件を報道するのであれば、権利制限規定である法41条に該当し違法ではないとされる可能性がある、という内容です。
で、これに対し野田先生のコメントがこちら。
独自の見解。襲名式事件の事案が読めていない結果として解釈適用を誤っていると思われる。 https://t.co/oWB8NkFBl7
— 弁護士 野田隼人 (@nodahayato) 2017年8月8日
襲名式事件て何だろな?と気になったので、せっかくなので簡単に調査。
あと、今回のとくダネ!の動画利用が著作権法41条によりOKになるのかも検討してみました。
1.襲名式事件 事案の概要
平成元年10月4日、TBSがニュース内で以下の二事件を報道
① 平成元年10月4日(本件番組当日)、大阪府警察本部が3年半ぶりに暴力団山口組の一斉摘発を行い、組員47人を逮捕し、組事務所など28か所を捜索したこと。
② 山口組では、平成元年7月20日、A新組長の5代目襲名式が行われ、新組長の威光を末端組員に対しても周知徹底させる目的で、この襲名式の模様をビデオテープに収録し、その複製ビデオテープを系列の組に配布したこと。
②の「暴力団の襲名式の様子を撮影したビデオ(以下「本件ビデオ」といいます)」の影像を放送した点につき、原告は本件ビデオの著作権者が原告であり、TBSがビデオを放送した行為は原告の著作権を侵害するものとして、1000万円の支払を求めました。
これに対しTBSが、本件ビデオの放送は放送によって時事の事件を報道し著作権法41条を抗弁として主張。(条文の該当部分を下線つけてます)
41条「写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。」
で、判決は原告の請求棄却という結論になっており、争点である「時事の事件報道のための適法利用の抗弁」については、TBS側の主張が認められています。
※本件ビデオが著作物であるという点については、争いがない事実とされています
※棄却の理由は41条による抗弁が認められたからではなく、そもそも「原告は著作権を有していない」という点によるものです
2.本件ビデオは「当該事件を構成し」ているのか
広辞苑によると、構成とは「かまえつくること。幾つかの要素を組み立てて一つのものにこしらえること。また、その組立て。構造。」を意味するとあります。ということは、著作物が事件を形成する要素の一つでなければ「事件を構成する」とはいえないですね。
暴力団の方たちにとって、新組長の襲名は、単なる団体内部の私事ではなく広域暴力団の諸活動にとって重要な役割を果たしているそうです。
また、本件ビデオの製作及び複製ビデオテープの配付は、新組長の威光を末端組員(系列の団体の構成員)に対しても周知徹底させるために行われたものであり、勢力拡大の動きの一環であると位置付けられていることが認められると。
要するに、襲名式は単なる式典ではなく威光を示すための重要イベントで、式典を撮影した本件ビデオは単なる思い出作りではなく、記録として残し広く配布することで末端の組員まで威光を徹底させる目的であったということです。
そうだとすると「襲名式の様子を撮影しビデオを配布した」ことそのものが「時事の事件」であり、本件ビデオはその事件の一部を構成するものであるというのは、違和感のない結論ですね。
3.台風動画の転載は違法か
条文の文言・襲名式事件のいずれをベースに考えても違法だというのが私見です。
前述していますが、条文の文言が「事件を構成し」となっており、著作物が事件の要素となっていることが法41条により著作権者の許諾が不要となる要件です。今回のケースは「台風」または「台風による被害」という事件を単に撮影した動画であり、事件を構成するものではありません。また、襲名式事件は著作物である本件ビデオがまさに事件の一部という事案であり、今回のケースは射程外だと考えられます。