このエントリーは"法務系 Advent Calendar 2017の15日目のエントリーです。
がっつりとハードルを上げてくださったマイニチぱみゅぱみゅ(●´ω`●)(@Utastm)さんからバトンを受け取りました。
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定番の分野・トピックというのは諸先輩方の皆様にかなうべくもなく、やはり若手(20代なので偽装ではない)は目新しいトピックを開拓していくべきだ!ということで、私のACテーマは世間のトレンド真っ只中の「副業」でございます。
現職について1年半が経過して、落ち着くと同時に危機感的なものを感じるようになりました。
前職よりも規模感が小さい会社に転職した結果、幸いにも現場に近い場所で仕事ができました。お金を稼ぐというのは大変なんだということを身をもって知り、金策に関する興味が深まりました。
AIにどれだけ仕事を奪われるのか。事務職である以上受けるあおりは少なくないと考えています。
業績がいいとはいえベンチャーなので、今の会社がダメになった時どうすればいいかというのはイヤでも考えてしまいます。
私は法曹資格持ってないので、フリーランスになったら自分一人でリーガル関係で稼ぐというのは相当難しいものがあります。残酷なまでに突きつけられる「今会社を放り出された生きていけないよね」という悲しい現実。
にもかかわらず、一時期のシャープや今の東芝の状況からしても「一社に身を埋める時代」でないということは明らかです。
そうなると
a) いざという時いつでも転職できるように市場価値を高めておく
b) 会社に依存しなくても稼げるようになっておく
のどちらかはできるようにならんといけません。
じゃあどっちをできるようになるか?...
両方でしょ!
というところまでがイントロで、以下本編です。
1.どんな副業をチョイスすべきか
副業って言っても色々とありますが、じゃあ何をするのかと言いますと
契約書審査や法律相談などのリーガル的なお仕事「以外」
であれば、なんでもよいと考えております。
理由その① ~市場価値アップの観点から~
市場価値アップというと抽象的ですので、記事を交えながら固めます。
How Google works 「私達の働き方とマネジメント」という書籍の紹介記事です。
メインのポイントは
・企業の成功に必要となる要素は
→プロダクトの優位性(質・スピード)
・優れたプロダクトをスピードを持って開発するにはどのような人材が必要か
→スマート・クリエイティブと言われる人々である
・スマート・クリエィティブとはどのような人か
→医師、エンジニアなど高度の専門知識を持っており、実行力に優れ、単にコンセプトを考えるだけでなく、プロトタイプを創ることのできる人々。また、ビジネスセンスがあり、専門知識をプロダクトの優位性や事業の成功に結びつけて考えることができる。
企業の成功に必要な人の市場価値が上がるのは明白なので
法務なので高度の専門知識は持っているという前提で考えれば、後必要なのは
「プロトタイプを生み出せる」つまりはクリエイティブであって
「知識をプロダクトの優位性or事業の成功に結び付けて考えることができる」ビジネスセンスを持っていること、ということになります。
じゃあどうすればクリエイティブになれて、ビジネスセンスが身に付けられるのかというと実践してみるのが一番の最短距離、すなわち自分でモノ/サービスを作って、それを売るだけの話なのですが
勤め人×法務ですとそういう機会ってかなり少ないので、副業はリーガル関係以外で探すべきなのです。
理由その② ~法務業務以外でもやれるでしょ?~
「そうは言っても、法務が法務以外のお仕事をやるなんて難しいのでは...」と思った方に、大丈夫ですよというお話です。
まずはこちらのインタビューから。
この他にも、弁護士←→コンサルというのは比較的よく見かけるジョブチェン事例ですね。
理由は「ロジカルが必要とされる部分が共通しているから」と、インタビュー中にもあるとおりだと思います。
そして、ロジカルはコンサルに限らずホワイトカラー的な職業全てに活きるスキルであり、法務はロジカルが要求される職業です。つまり、法務で仕事ができていれば他職でも通用する可能性は十分にあるということです。
「いやいや、他職でも活躍できるのは弁護士だからでしょ... 」と思った方に、次は私の体験談
今まで高評価を頂いたところの例を言いますと
・ 現部門の上長からはメールや報告の文書が論理的で分かりやすいとの評価
・ エンジニアの勉強をしていたとき、プロダクトのコードをチェックした講師から「コードが非常に綺麗で、一読したら何がしたいか分かる」との評価
・ 全然リーガルに関係ない他部門の相談をしばしばお願いされて、気付けば私の承認が必要になった
というのがあります。
高評価を受けている根本となっているのは、いわゆるロジカルな部分や文書作成能力です。
これは決して先天的な才能とかではなく、全て法務として仕事や予備試験とかを通じて法律の勉強をした結果習得したスキルによるものです。
「法務に関わったことのない自分」が平行世界で別世界で仕事をしていても、間違いなく高評価を得られていません。
また、法務職は普段から自己研鑽的な勉強が必要な業務ですし、日ごろからインプットをする癖がついているモノです。別職種に行ったときはこれが周りと差をつけることができたポイントでした。
ということで「法務は法務以外の仕事ができない」ではなく「法務だから未経験の他の仕事でもやっていける」というのが私の持論です!
理由その③ ~非弁行為~
私達法務パーソンが「副業やろうぜ」ってなったときに、まず立ちはだかるのが弁護士法72条です。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
「法律事件」をどう解釈するかにつき、事件性必要説と不要説に分かれているようですが
違反時の罰則が二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金(77条3号)ということで、踏めたモンではないリスクとなってます。こればっかりは仕方ありません。
(「弁護士法72条は弁護士の既得権益を確保するものであって、市民の利益を~」なんてことを声高に主張してらっしゃる団体もあるみたいですね。)
他社の社外取や顧問として活躍している方もいらっしゃるようですが
他社とのコネクションや求められるスキルから考えると流石にハードルが高いように思います。
以上、法務パーソンが法務畑以外の仕事をやるべきで、法務畑以外でも活躍できる土壌があるという話でした。
リーガル以外なら何でもいいと言いながら、アルバイト等のように時間給の仕事は避けるべきですねと補足。本業が終わった後の深夜労働で本業に影響が出たら本末転倒ですので。
時間が固定されていない委託系のお仕事はクラウドワークス的なサイトで探せばいくらでも出てきますし、そういったところに掲載されているもので十分です。英語の邦楽論文の和訳とかとっつきやすそうなのもありますよ。
ちなみに私が手をつけているのはデータ分析とアプリ開発です。
2.法務キャリアへのつながり方
ここからは、副業で経験した他業種がどう法務業務に生きてくるかのご説明です。
○ 直接的に活きるところ ~リスク計算能力の向上~
適切なリスクの判断につき、私のお気に入り書籍のこちらで法的リスクの計算に必要な各要素について的確な解説がされています。
一部引用すると
法的リスクとは
① 法令違反そのものの影響の大きさ
② 法令違反の発生確率
③ ダメージコントロールの成功度
を掛け合わせたものと表現することが可能であり、次ページで続けてこのように説明されいてます。
いやいやこんなの法務なら当たり前だろ!ブログに書くほどのことかよ!
という意見もあるでしょうが、当たり前のこの
「法的リスク算出→費用便益分析→アドバイス」
というアウトプットの質をどれだけ上げられているか、つまり各要素をどれだけ具体的に数値化して事業部の意思決定をサポートできているかはとっても重要だと思うわけです。
じゃあ数値化すればいいじゃないという話ですが、これがまた難しい。
転職市場を見ていると、数字を分析したり経営に活かせる経営企画、マーケティングやデータアナリティクスといった分野の年収はかなり高いです。
要するに、数字を使って分析するというのはそれだけ難しい業務ということで
じゃあ、ちょっとでも数値化して法的リスクが提示できるようになれば相対的にとても優秀な法務になれるのではないかと。
何をすればどれだけ儲かるのか、どれだけ損失がでるかを判断できるようになるには
いかにビジネスの実践を積めるかという点に尽きるのではないでしょうか。
(他にも有ったら教えていただきたいです)
○ 間接的に生きるところ ~事業部門を理解するために~
自分のタイムラインを見てますと、一度事業部を経験することは大事だよなあと感じている方、実際に経験してみて法務に活きているという感覚を持ってらっしゃる方がほとんど。
というか、「コスパ良くなかった」とか「経験する価値がない」という方を見た覚えがないです。
事業部門で経験するのと同等とまではいいませんが、一度自分でビジネスを経験することで事業部門スタッフの感覚を理解し感じることは十分に可能です。
法務(に限らずサポート的な部門に対して)に何を期待して、何をしてほしくないのかというのを実感で感じてみることは大事ですよね。
○ 守りの考えから ~気軽にジョブチェンはできない~
別に副業じゃなくてもジョブチェンすればいいのでは?という疑問に対して
ジョブチェン=異動or転職ですが、両方ともハードル高いですよね。
他部門への異動ですと、法務は選任で雇われることが多くそもそもが難しいです。事業部内での異動がある会社でも、コーポレート部門から事業部にというのはなかなかレアケースかと思います。
じゃあ他部門研修でという考えがありますが、研修となってしまうと1、2ヶ月工場に行きましたとか、営業研修って言いながら営業の人の後について回るだけ、というのが経験上ほとんどです。「本気で」「お金を稼ごうとしたか」が大事なので、全然目的達成のアプローチにはなってないですよね。
まどろっこしいこと言ってずに他職種への転職、だとどうでしょう?
結論からいくと、待遇面・年齢面・実際に新業務にフィットするのかという点から難しいですよね。
待遇面だと、体感的に法務以外で転職すると50万ぐらい下がるイメージです。生活水準がそれだけ落ちるというのは難しいでしょう。家庭を持っている方は特に...
年齢的な話をしますと、どのエージェントに聞いても「未経験業務にジョブチェンしたかったら20代のうちでないと」という回答が返ってきます。まあ採用する側としても理解できるところではあります。
何より怖いのが、幸いにも上記課題をクリアできたのに実際に別業務に従事したら「これは自分に向いてないな」と判明してしまったときです。早く法務に戻りたい、でも今やめたら履歴書に変な経歴が...という狭間で悩むリスクもなくなります。
以上、法務パーソンにおける副業の必要性と相当性でした。
...別に副業が例外と言いたいのではなく、ちょっと論文式な雰囲気を出したかっただけです。すいません。
余談はさておき、本業への好影響が見込まれて、特にリスクもなく(自社の就業規則は確認してくださいね)、その上ちょっとした収入が見込まれるのです。
軽い気持ちでいいので一度やってみませんか?
合うか合わないかなんてやってみないと分からないですし、無理そうならやめればいいだけの話です。
3.おわりに
まとめますと
① 自分の知識を自社製品・サービスの優位性や事業の成功につなげることができれば、法務パーソンとして市場価値を上げることができ、今後も必要され続ける(生き残る)ことができる
② そのためにはビジネスに関する経験が必要であり、他業種でも対応できる土壌がある法務パーソンは副業に適している
③ 他業種をやって幅を広げれば選択肢が増えるし(横の観点)、法務としてのキャリア向上にもつながる(縦の観点)
というポエムでした。
この記事が、法務以外のことをやってみるのも悪くないかもな、なんて思っていただくきっかけになれれば幸いです。
法務以外のお仕事経験が法務業務にすごく役立ってくれています、というのをもっと具体的に言語化したかったのと
副業実践談も交えて書ければ良かったのですが、執筆までに書けるほどの数こなすことが間に合わず...
というのが心残り。
なお、言うまでもないことですが
副業が法務に与える反射的メリットだけでなく、「お金が増える」「自分で稼げるようになる」というのも同じかそれ以上に大事です。
お金があるからこそ会社に依存しなくてよくなり、やりたいことができれば資本を投下できるのですから。
できることなら、副業で稼いだお金は浪費せずに自己投資、なんてできると最高のループですね。ああおいしい焼肉食べたい。
ご覧になった皆さんも「こんな副業いいんじゃない?」みたいな情報ありましたら是非是非教えてくださいませ。
コメントはもちろん、ツイッターのアカウント宛(@pnt_law22)でも全然OKです!
※ 若手の分際で「法務以外に目を向ける」なんて言うと結構反感を買いそうですが、そういったリアクションは百も承知の上で提案してます。
さて、私の記事はここまでです。
明日は@NH7023ことアーリー@育休&リーガルテック さん。
前回のライトニングトークではハンバーグありがとうございました!
(美味しかったです!)