珍しく法務っぽい話題メインで書きます。お題は広告法務について。
まずはこちらをご覧ください。
3行でまとめると
・ヘイト系まとめサイトの酷さが目に余ると怒る人たち
・アフィ収入なくなったらサイト運営続けられないんじゃね?と思いつく
・出稿元企業に経緯を説明→出稿元企業が広告掲載を停止
という流れです。自社にも起きそうな問題ですよね。そんなヘイトサイトに広告出すつもりなんてなかったのに!みたいな。
IT業界に入って驚いたことのひとつに「ネット広告の勢いは凄いな」というのがあります。広告ってこんなに儲かるんだー、夢があるなーと。
お金が動くところにトラブルありといいます。ソースは私。メーカーであれ金融であれネット広告を打たない会社ってないと思うので、必然法務にも何かしらネット広告系の相談が来ることが予想されます。
幸い業種的に広告と触れる機会が多かったので、実務的な話を含めて広告契約の話を書きます。それではどうぞー
1.気をつけるべきポイント
広告取引の流れ
まずは広告を掲載するとなったときの全体像を。説明用に超省略して書きます。
自社が広告を出稿する場合、大概こんな感じの流れになります。ちなみに自分で作った図なので図解もできる法務の人と褒めてください。
広告を出稿する際、基本的に掲載媒体と直接取引するということはありません。何かしらの仲介企業が間に入り、出稿候補(仲介企業の取引先)の中でもっとも広告効果が出るであろう媒体を仲介企業に選んでもらいます。アドテクノロジーが全自動で選んでくれたり、カテゴリーだけは人が選んだりと色々パターンはあるようです。
広告系の契約を結ぶ相手は媒体(出稿先)ではなく仲介企業、というのを分かっていただければOKです。
広告契約で見るところ
① 即時出稿停止が可能か
変なサイトに広告を載せると「自腹を切って広告を出した結果自社の価値が毀損した」ということになります。そんな悲しい事態は極力避けるために、変なサイトに自社の広告が掲載されていると知ったらすぐに出稿停止できるような条項が入っているかを確認しておきましょう。
可能であれば「変なサイトに掲載した分の広告料は払わんぞ」というのも入れておきたいですね。変かどうかの判断が難しいものもあるので相手は嫌がることが予想されます。相手との力関係をベースにして臨機応変にどうぞ。
仮に即時停止条項がなかったとしても、今回ほど明確に媒体がアレなケースだと仲介企業も応じてくれるとは思いますけどね。
② 単価の計算方法
単価の計算方法ですが、CPI・CPM・CPCといった略称単語がやたらと出てきます。略称使うのは別にいいけどたまに定義されてないままの契約書があるので困りもの。
特にCPIは
Cost Per Impression(表示回数に応じて料金発生)
Cost Per Install(アプリ等のインストール回数に応じて料金発生)
のどちらにも取れますし、契約内容も全然変わるので定義されてるかは要チェックです。
他だと”look back window”とか”attribution window”というのもよく見ます。これ何だか分かります?
正解は「広告クリック後に発生したインストールを、クリック後何日まで広告による成果とみなすかの期間」でした。ちなみにググっても出てきません。分かるかそんなの!
2.広告出稿時のリスクって何よ?
プロモ担当の人から聞いた実例だと、以下のようなトラブルがあったそうです。
・予算を超えて出稿した
・出稿期間以外に広告が出てた(広告会社の担当者が止めるのを忘れるなど)
・配信NG(アダルトとか)の配信先に出てる
上の2点は予算以上・期間外の広告料を請求しないというので対応可能だと思いますが、NG先に出稿は自分がやらかしたらと思うと震えますね...
3.広告契約に関する書籍
手持ちの本をご紹介。この2冊があれば十分という感覚です。
ビジネス面や契約スキームより法律論を優先して考えるとロクなことがない、という自分の経験則があります。タイトルから分かると思いますがリーガル要素は全然ありません。だがそれがいい。
右が解説左が図解という構成になっています。図解があるので微妙にややこしい取引像のイメージもしやすく、見開きごとに収まる解説量でデジタル広告の全体像を把握できる内容になっています。
去年評判になっていたこちらもステキです。実務面をベースに広告に関係するリーガル面が解説されています。実務面とリーガル面のバランスが良いって良書の必要条件ですよね。
第2編・実践編で解説されていますが、広告に掲載された肖像の権利処理とか意外にややこしいんですよね。定番の景表法だけでなく「公職選挙法」のトピックもあって、カバー範囲が広いなとうなりました笑
詳しくはkanegontaさんのブログがとっても詳しいので、こちらをポチっとどうぞ~
以上です。
そもそも、条項集含め広告法務の本って少ないんですよ。困ったときの●●みたいな本がないので、スキームやら全体像を自分で理解する・分からないことは担当者にがっつり教えてもらうというのが大事だなーと思っとります。
面白いですよ、マーケティング。