キングダム劇場版が絶賛上映中です。流行りのものには乗ることが大事。原作読んだ方も読んでない方も楽しめる良作品ですのでまだの方はGW中にでもぜひ。
さて本題。
キングダムの舞台は中国の春秋戦国時代ですが、戦国だけでなく諸子百家と称される優れた思想家を輩出した時代でもあります。リーガルに携わる人なら聞いたことぐらいあるであろう、法家の李斯もこの時代に登場。
法家の文字通り法に関する思想家で、初めて中華を統一した秦の成立を法・制度面から支えた人物です。そんな李斯もキングダムに漏れなく出演してまして、リーガルパーソンにとてもためになるワンシーンがあったのでご紹介します。
「今だ成し遂げられたことのない中華統一が成ったとして、その後どう統治するつもりか?」
そんな質問に対し、統一国家建設の要は「法」だと政(後の始皇帝)は語ります。
(キングダム488話より)
敵国の将が納得してしまう熱量で統一後の戦略を語る政。しかし直属の部下である昌文君には統一後の中華を治める法が何なのかがどうしても分かりません。 そこで法の番人である李斯に法に関するレクチャーを受けに行きます。
中華全体を法で統治する法治国家という考えは法家の考えと合致している、と李斯は言います。法家の真髄に合致するものであるがゆえに昌文君の考えが及ぶところではないと。中華を統一して増えた国民は敵国の国民であり、違う文字・違う思想・違う貨幣を持つ「違う文化」を持つ人々なのだと。
全くの異文化を持つ六国の人間たちを一つにするものが「中華を治める法」だと説明し、ここで李斯が昌文君に対し質問をします。
...私もこのページでしばらく考えましたが、なかなか良い答えは出てきませんでした。
昌文君は「法とは、刑罰をもって人を律し治めるものだ」と答え、私も似たようなことを考えてましたがまあ違いそうです。すごい基本的な質問に答えられないのにモヤモヤしちゃいます。一応法律関係で飯食ってたんですが。記憶違いだったかもしれない。
李斯は答えます
「刑罰とは手段であって法の正体ではない」と。そして
「法とは願い!国家がその国民に臨む人間のあり方の理想を形にしたものだ!」
「統一後、この全中華の人間にどうあって欲しいのか。どう生きて欲しいのか。
どこに向かって欲しいのか。」
鳥肌モノです。これくらいカッコよく法を語れると弁護士でなくても女性にモテそう。いやそんな話ではなかったので本題に戻します。
「法とは何か」の問いに対してはいろいろな答えがあることかと思います。
一般的には社会規範であり道徳とは違うもの、なんて説明が多いですよね。渡辺洋三氏の書籍では「法の精神とは、一言でいえば、正義である。」と説明されています。伊藤塾の体系マスターで塾長から熱い講義を受け大変に感銘を受けたこともあります(内容は忘れましたが)。
ただ、色々と見て聞いてもバチっとハマる答えはありませんでした。問いが抽象的であるが故に答えも抽象的になってしまうこと、あまりにそれらしく説明するがゆえに「ちょっとカッコよく言いすぎじゃない?盛ってない?」みたいな説明が多いからかと思います。
そんな中で「法とは願い」という答えはとても良いなーと。刑罰や人を律することはあくまで手段であり、最終的に目指す先は国家が国民にあってほしい姿を提示することという整理も非常にしっくりくるものです。
この考え方を流用すると
契約は取引の相手方にあってほしい姿を形にするものでしょうし
社内規則は会社が従業員にあってほしい姿を示すものでしょうし
利用規約はユーザーに「こうやってサービスを使ってください」という願いを示すもの
なのですよね。
契約や規則というとどうしてもペナルティに関する部分が先に来ますし、それは弁護士や法務として当たり前の姿勢でもあるのですが
小手先の文章や文面を考えるよりまず先に「相手方やユーザーにどうあってほしいか?」から考えると非常に本質的な思考や議論ができてよいです。
意味不明に一方的な契約条件、謎の契約書クソコメ、どうでもいいてにをは修正などなどの問題を起こしてくる人を見ると「ほんんんまにしょうもないヤツやな」と感じれますし、流し作業のようにサクサクと対応していくことができるようになります。
そんな視点を持ちながら仕事ができていると、現場ヒアリングや相手方との交渉もうまくスムーズにいくことかと思います。マインドセットとしてもオススメです。
マンガ読んでみましょうよ。映画も見に行きましょうよ。面白いですよ。会話のきっかけにもなりますよ。
ちなみに『「山崎賢人と吉沢亮メッチャかっこいいよね!」と言っておけば大体の合コンで話題に困らなくなる』とちょっと悪い友人が言っておりました。アンテナ高いって大事ですね。
何このオチ?